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1 「最後の電王戦ソフト連勝」佐藤名人「思いつかない手」
毎日新聞(朝刊西部版28面2017年平成29年5月21日)は、
「コンピューター将棋ソフトと棋士が戦う第2期電王戦二番勝負第2局は20日兵庫県姫路市の姫路城で行われソフトPONANZA(開発者山本一成氏と下山晃氏)が佐藤天彦名人に勝って2連勝を飾った。」
と報じました。
2 写真からうかがえる人間らしさと違和感
掲載されている写真には、佐藤名人とポナンザが対戦する姿が映されています。
佐藤名人は、左頬に左手を当て、肘をついています。
頭を支えながら、腕組みをして考え込んでいる様子。
顔は、ややうつむき加減で髪の毛がすこし前に降り、
かなり憔悴している様子です。
一方、コンピューターポナンザ(PONANZA)です。
背面はコンピューターからの接続ケーブルの端子がむき出し。
将棋盤より2倍大の土台に、人間の足のようなアームが上に2本、くの字に上に曲がって伸びています。
そのアームで駒を動かします。
ちょうど人間が膝を曲げて、腹部から足までの下半身が逆立ちしたような本体です。
その下にコンピューターが仕組まれています。
写真左側のポナンザと右側の佐藤名人の世界は、盤面を挟んで異次元の空間のようです。
佐藤名人は、ロダンの考える人のように悩める人間らしい様子です。
ポナンザには、違和感を覚えます。
名人戦といえば見慣れた光景があるのですが、筆者は古い人間なのでしょうか。
せめてホンダアシモくんかソフトバンクペッパーくんのようなロボットにしてもらいたいものです。
3 人間に無限の体力と思考力を求めるポナンザ
電王戦中継ブログには、インタビューが掲載されていました。
興味ある方はぜひ一読されて下さい。棋譜も掲載されています。
日本将棋連盟電王戦中継ブログ 平成29年5月20日 http://kifulog.shogi.or.jp/denou/
インタビューでは、「コンピューター将棋は終盤が正確で間違えない。定石に反する手を指し戦機をつかんで優勢にするという、戦いが始まるまでの間合いが非常に素晴らしい。」(日本将棋連盟会長・佐藤康光九段)。
また、「私の感覚や価値観の外にあるPONANZAの独特な感覚を見せられた。」(佐藤天彦叡王)とのコメントがありました。
「終盤まで疲れない」、「定石にとらわれない」ことは、コンピューターの特徴です。
その逆、「終盤は疲れる」、「定石に心理的な制限がかかる」というのは人間の特徴と考えます。
山本さんが「PONANZAはバランスを保つ将棋を好むが、人間には無限の体力と思考力が必要」と言うように、その特徴が今回の対局に大きく表れたのでしょう。
4 深層学習でさらに強化
PONANZA開発者・山本一成さんは、こうも述べています。
「一年前の自分自身のプログラムに勝率9割。最近はディープ・ラーニング(深層学習)のテクニックを使う。『1手も読まずに次の手を予想する』技巧では有段クラスの実力がある。1秒間に1手読むようにするとアマチュアトップレベル。人間の知能に迫りつつある。羽生三冠とも戦いたいが、コンピューター将棋が暴力的なまでに強い。それを見せつけるのもナンセンス。」
今のプログラムでも名人に勝てるようになっていますが、ディープラーニングの技術を使うと飛躍的に強くなるという話です。
大きな期待と同時に、一抹の不安が残ります。
「暴力的な強さを見せつけるのもナンセンス」という山本さんの言葉のように、人工知能は、人間の制御の範疇にある間は、人間のために大いに力を発揮するでしょう。
人工知能が今後どんなふうに発展していくのか、目が離せない状況になってきました。
コンピューター将棋ソフトと棋士が戦う第2期電王戦二番勝負第2局でソフトポナンザが佐藤天彦名人に勝って2連勝。
写真から名人の人間らしさがうかがえ、ポナンザには違和感を感じます。 「終盤まで疲れない」「定石にとらわれない」コンピューターと勝負するには、人間に無限の体力と思考力が必要です。 ポナンザは、深層学習でさらに強化され人間の知能に迫りつつあります。 「1手も読まずに次の手を予想する」技巧では有段クラス。1秒間に1手読むようにするとアマチュアトップレベル。 「暴力的な強さを見せつけるのもナンセンス」という山本さんの言葉のように、人工知能は、人間の制御の範疇にある間は、人間のために大いに力を発揮するでしょう。 人工知能が今後どんなふうに発展していくのか、目が離せない状況になってきました。 |