- 平成29年告示の小学校学習指導要領体育科の目標は,どのようなものでしょうか。
- 小学校体育科では,「体育や保健の見方・考え方を働かせ,課題を見付け,その解決に向けた学習過程を通して,心と体を一体として捉え,生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力」の育成を目指します。
小学校における体育の見方・考え方は,
運動やスポーツが楽しさや喜びを味わうことや体力の向上につながっていることに着目するとともに,「すること」だけでなく「みること」,「支えること」,「知ること」など,自己の適性等に応じて,運動やスポーツとの多様な関わり方について考えること
小学校における保健の見方・考え方は,
特に身近な生活における課題や情報を,保健領域で学習する病気の予防やけがの手当の原則及び,健康で安全な生活についての概念等に着目して捉え,病気にかかったり,けがをしたりするリスクの軽減や心身の健康の保持増進と関連付けること
を意図しています。
体育科の目指す資質・能力を育成するためには,児童の発達の段階,能力や適性,興味や関心等に応じて,運動の楽しさや喜びを味わい,自ら考えたり工夫したりしながら運動の課題を解決するなどの学習が重要です。
掲載の趣旨
平成29年告示の学習指導要領では,資質・能力や内容などの全体像を分かりやすく見渡せるよう,枠組みが大きく見直され「学びの地図」として整理されました。
その趣旨に添い,本稿では,解説本文を次のように編集しています。
・ 目標解説の内容が捉えやすいように原文を装飾
・ 他教科等・他学校種の目標や解説が比較しやすように編集
具体的には,本文は原文通りで,次のように編集しています。
・ 各教科等の目標の解説を共通した章立てで構成
・ 学校種間の対応する内容についてリンクで移動 など
掲載の趣旨の詳細は,下のボタンより参照できます。
なお,本稿は,「文部科学省ウェブサイト利用規約」(2018年3月1日に利用)に基づいて,原本を加工し作成しています。
小学校・中学校各教科等の目標の解説 「小・中学校「教科等の目標解説を縦横に読む」シリーズ」は,下のボタンより閲覧できます。
小学校 体育科の目標
1 教科の目標
(1)目標
体育科の目標は,小学校教育の中で体育科が担うべきものを示すとともに,体育科の学習指導を方向付けるものである。
また,これは,学習指導要領第1章総則の第1の2の(3) に示した学校の教育活動全体を通じて行う「体育・健康に関する指導」の方向を示すものでもある。
今回改訂した体育科の目標は,義務教育段階で育成を目指す資質・能力を踏まえつつ,引き続き,体育と保健を関連させていく考え方を強調したものである。
体育や保健の見方・考え方を働かせ,課題を見付け,その解決に向けた学習過程を通して,心と体を一体として捉え,生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) その特性に応じた各種の運動の行い方及び身近な生活における健康・安全について理解するとともに,基本的な動きや技能を身に付けるようにする。
(2) 運動や健康についての自己の課題を見付け,その解決に向けて思考し判断するとともに,他者に伝える力を養う。
(3) 運動に親しむとともに健康の保持増進と体力の向上を目指し,楽しく明るい生活を営む態度を養う。
※ 平成29年中学校学習指導要領「保健体育」目標の柱書
「体育や保健の見方・考え方を働かせ,課題を発見し,合理的な解決に向けた学習過程を通して,心と体を一体として捉え,生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。」
※ 平成20年小学校学習指導要領「体育」の目標
「心と体を一体としてとらえ,適切な運動の経験と健康・安全についての理解を通して,生涯にわたって運動に親しむ資質や能力の基礎を育てるとともに健康の保持増進と体力の向上を図り,楽しく明るい生活を営む態度を育てる。」
※ 平成10年小学校学習指導要領「体育」の目標
「心と体を一体としてとらえ,適切な運動の経験と健康・安全についての理解を通して,運動に親しむ資質や能力を育てるとともに,健康の保持増進と体力の向上を図り,楽しく明るい生活を営む態度を育てる。」
※ 平成元年小学校学習指導要領「体育」の目標
「適切な運動の経験と身近な生活における健康・安全についての理解を通して,運動に親しませるとともに健康の増進と体力の向上を図り,楽しく明るい生活を営む態度を育てる。」
(2)目標の構成
この目標は,(1)~(3) の目標が相互に密接な関連をもちつつ,体育科の究極的な目標である,生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力を育成することを目指すことを示している。
学校教育法では,小学校において「義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なものを施す」ことや「生涯にわたり学習する基盤が培われるようにする」ことが規定されており,今回の改訂においては,この視点をより明確に示した。
また,
・ その特性に応じた各種の運動の行い方及び身近な生活における健康・安全についての理解と,基本的な動きや技能を身に付けるようにする「知識及び技能」,
・ 運動や健康についての自己の課題を見付け,その解決に向けて思考し判断するとともに,他者に伝える力を養う「思考力,判断力,表現力等」,
・ 運動に親しむとともに健康の保持増進と体力の向上を目指し,楽しく明るい生活を営む態度を養う「学びに向かう力,人間性等」
の三つの目標が相互に密接な関連をもっていることを示すとともに,体育科の重要なねらいであることを示したものである。
2 柱書
次に,体育科の目標に示されている各部分を解説すると次のとおりである。
(1)見方・考え方
① 体育の見方・考え方
体育や保健の見方・考え方の「体育の見方・考え方」とは,
生涯にわたる豊かなスポーツライフを実現する観点を踏まえ,
「運動やスポーツを,その価値や特性に着目して,楽しさや喜びとともに体力の向上に果たす役割の視点から捉え,
自己の適性等に応じた『する・みる・支える・知る』の多様な関わり方と関連付けること」
であると考えられる。
小学校においては,
運動やスポーツは特性に応じた楽しさや喜びがあることと体力の向上につながっていることに着目するとともに,
「すること」だけでなく「みること」,「支えること」,「知ること」など,自己の適性等に応じて,運動やスポーツとの多様な関わり方について考えること
を意図している。
② 保健の見方・考え方
「保健の見方・考え方」とは,
疾病や傷害を防止するとともに,生活の質や生きがいを重視した健康に関する観点を踏まえ,
「個人及び社会生活における課題や情報を,
健康や安全に関する原則や概念に着目して捉え,
疾病等のリスクの軽減や生活の質の向上,健康を支える環境づくりと関連付けること」
であると考えられる。
小学校においては,
特に身近な生活における課題や情報を,
保健領域で学習する病気の予防やけがの手当の原則及び,健康で安全な生活についての概念等に着目して捉え,
病気にかかったり,けがをしたりするリスクの軽減や心身の健康の保持増進と関連付ける
を意図している。
特に,「見方・考え方」については,中央教育審議会答申において,「『見方・考え方』には教科等ごとの特質があり,各教科等を学ぶ本質的な意義の中核をなすものとして,教科等の教育と社会をつなぐもの」,「『見方・考え方』は,新しい知識及び技能を既に持っている知識及び技能と結び付けながら社会の中で生きて働くものとして習得したり,思考力・判断力・表現力を豊かなものとしたり,社会や世界にどのように関わるかの視座を形成したりするために重要なもの」としている。
体育科においては,「見方・考え方」を働かせる学習過程を工夫することにより,体育科で育成を目指す資質・能力がより豊かになり,体育科の目標である,「生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力」の育成につなげることを目指すものである。
運動領域においては,
運動をする子供とそうでない子供の二極化傾向が見られることや,様々な人々と協働し自らの生き方を育んでいくことの重要性などが指摘されている中で,
体力や技能の程度,年齢や性別,障害の有無等にかかわらず,運動やスポーツの特性や魅力を実感したり,運動やスポーツが多様な人々を結び付けたり豊かな人生を送ったりする上で重要であることを認識したりすることが求められる。
その際,各種の運動やスポーツが有する楽しさや喜び及び関連して高まる体力などの視点から,自己の適性等に応じた多様な関わり方を見いだすことができるようになることが必要であることを示したものである。
保健領域においては,
社会の変化に伴う現代的な健康に関する課題の出現や,情報化社会の進展により様々な健康情報の入手が容易になるなど,環境が大きく変化している中で,
児童が生涯にわたって正しい健康情報を選択したり,健康に関する課題を適切に解決したりすることが求められる。
その際,保健に関わる原則や概念を根拠としたり活用したりして,疾病等のリスクの軽減や生活の質の向上,さらには健康を支える環境づくりを目指して,情報選択や課題解決に主体的に取り組むことができるようにすることが必要であることを示したものである。
このような見方・考え方を働かせることができるような学習過程を工夫することが求められる。
※ 【英訳(仮訳)】小学校学習指導要領では,「各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(以下「見方・考え方」という。)」を「discipline-based epistemological approaches, hereinafter referred to as “Approaches”」と訳す。見方・考え方を“Approaches”で代表している。このことを考え合わせると見方・考え方の意味がより一層捉えやすくなる。すなわち,見方・考え方は,物事を認識するときの入り方,近づき方,せまり方と言い換えることができる。
引用:文部科学省「平成29年改訂小学校学習指導要領英訳版(仮訳)」[ONLINE]https://www.mext.go.jp/content/20200227-mxt_kyoiku02-100002604_1.pdf(cf:2020.05.26)
(2)学び方
課題を見付け,その解決に向けた学習過程とは,
1. 運動や健康についての興味や関心を高め,運動や健康等に関する課題を見付け,
2. 粘り強く意欲的に課題の解決に取り組むとともに,
3. 自らの学習活動を振り返りつつ,課題を修正したり,新たに設定したりして,
4. 仲間と共に思考を深め,よりよく課題を解決し,次の学びにつなげることができるようにする
ことを示している。
課題を見付け,その解決に向けて取り組む学習過程においては,
・ 自分や仲間が直面する課題を比較,分類,整理することや,
・ 複数の解決方法を試し,その妥当性を評価し,他者との対話を通して,よりよい解決策を見いだしていく
主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善の推進が期待される。
(3)資質・能力
心と体を一体として捉えとは,
児童の心身ともに健全な発達を促すためには,心と体を一体として捉えた指導が重要であり,心と体の発達の状態を踏まえ,運動による心と体への効果,健康,特に心の健康が運動と密接に関連していることなどを理解することの大切さを示したものである。
そのためには,「心の健康」で学んだことと「体ほぐしの運動(遊び)」など具体的な活動を通して,心と体が深く関わっていることを体験できるよう指導することが必要である。
生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力とは,
「知識及び技能」,
「思考力,判断力,表現力等」,
「学びに向かう力,人間性等」
の三つを指している。
これらの資質・能力を育成するためには,児童の発達の段階,能力や適性,興味や関心等に応じて,運動の楽しさや喜びを味わい,自ら考えたり工夫したりしながら運動の課題を解決するなどの学習が重要である。
このことにより,生涯にわたって運動やスポーツを日常生活の中に積極的に取り入れ,生活の重要な一部とすることを目指しているものである。
また,児童が身近な生活における健康・安全に関心をもち,自ら考えたり,判断したりしながら,健康に関する課題を解決するなどの学習が重要である。
このことにより,現在及び将来の生活において,健康に関する課題に対応して,保健の知識及び技能等を活用して,自己の健康を保持増進するために的確に思考し判断するとともに,それらを表現することができるような資質・能力を育成することを目指している。
そのため,健康に関する課題を解決するなどの学習を取り入れ,知識を身に付ける指導に偏ることなく,資質・能力の三つの柱をバランスよく育むことができる学習過程を工夫し,充実を図ることが大切である。
なお,これらの資質・能力は,児童の発達の段階を踏まえて,適切かつ意図的に指導されることが大切である。
また,指導に当たっては,
・ 児童の心身の発達的特性の把握,
・ 施設や気候条件への配慮,
・ 指導内容の選定,
・ 指導計画の作成,
・ 学習活動の展開,
・ 学習評価
などについての検討が必要である。
さらに,運動やスポーツとの多様な関わり方ができるようにする観点から,運動やスポーツについての興味や関心を高め,技能の指導に偏ることなく,「する,みる,支える」に「知る」を加え,資質・能力の三つの柱をバランスよく育むことができる学習過程を工夫し,充実を図ることが大切である。
3 三つの柱
次に,体育科の目標に示されている各部分を解説すると次のとおりである。
(1)知識及び技能
その特性に応じた各種の運動の行い方及び身近な生活における健康・安全について理解するとともに,基本的な動きや技能を身に付けるようにする。
(1) の「知識及び技能」は,個別の事実的な知識のみを指すものではなく,それらが相互に関連付けられ,更に社会の中で生きて働く知識となるものを含むとされている。
体育においては,この趣旨を踏まえ,運動の楽しさや喜びを味わったり,身近な生活で健康の保持増進をしたりするための基礎的・基本的な「知識及び技能」を踏まえて設定されている。
生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するためには,スポーツとの多様な関わり方を含めた運動やスポーツの行い方や身近な健康について理解することが必要になる。また,その学習が児童にとって有意味に行われることが必要になる。
各種の運動とは,
・ 体つくり運動系,
・ 器械運動系,
・ 陸上運動系,
・ 水泳運動系,
・ ボール運動系及び
・ 表現運動系
という六つの運動領域の総称である。
その特性に応じた行い方について理解するとは,
これら各種の運動は,楽しみ方や解決すべき課題やその解決方法が異なることに対応している。
そのため,各種の運動で得られる楽しさや喜び,そこで解決すべき課題,それらの解決方法に応じた行い方を理解することを意図している。
また,それらの理解は,各種の運動の基本的な動きや技能を身に付けることに効果的であることを意図している。
加えて,各種の運動の基本的な動きや技能は,各種の運動で解決すべき課題と関連付けてその必要性や効果を理解できるようにすることが重要であることを示している。
身近な生活における健康について理解するとは,
主として第3学年及び第4学年,第5学年及び第6学年の保健領域に関連したねらいを示すものである。
具体的には,
・ 健康な生活,
・ 体の発育・発達,
・ 心の健康,
・ けがの防止及び
・ 病気の予防
についての基礎的・基本的な内容を実践的に理解することである。
また,これらの理解は,単に知識を記憶としてとどめるだけではなく,児童が,身近な生活における学習課題を見付け,それを解決する過程を通して,健康に関する課題解決に役立つ保健領域の主要な概念を習得することを目指したものである。
基本的な動きや技能を身に付けるようにするとは,
生涯にわたって運動やスポーツを豊かに実践していくためには,小学校段階において,発達の段階を踏まえ,その基礎となる各種の運動の基本的な動きや技能を,解決すべき課題と関連付けながら,確実に身に付けることが重要であることを示したものである。また,身近な生活を中心とした保健に関わる基本的な技能も含んでいる。
各種の運動は,楽しさや喜び,解決すべき課題やその解決方法に違いが見られる。
生涯にわたって心身の健康を保持増進し豊かなスポーツライフを実現するためには,
・ 各種の運動の特性に触れる楽しさや喜びを知り,
・ 運動と健康の保持増進との関係を実感する
ことが不可欠である。
また,特性に応じた課題やその解決方法に関する知識及び技能を,状況に応じて既存の知識と関連付けることで,様々な場面で活用できる概念としていくことや,習熟した技能として身に付けることが必要であることを示している。
例えば,
走り幅跳びにおける走る,跳ぶ,着地するなど種目特有の基本的な技能は,それらを段階的に習得してつなげるようにするのみならず,他種目や日常生活の動きにつなげることができるような気付きを促すことにより,生涯にわたる豊かなスポーツライフの中で主体的に活用できる技能として習得されることになる。
(2)思考力,判断力,表現力等
運動や健康についての自己の課題を見付け,その解決に向けて思考し判断するとともに,他者に伝える力を養う。
(2) の「思考力,判断力,表現力等」は,
・ 情報を捉えて多角的に精査したり,
・ 課題を見いだし他者と協働しながら解決したり,
・ 自分の考えを形成し伝え合ったり,
・ 思いや考えを基に創造したり
するために必要な資質・能力である。
そのため,
・ 新たな情報と既存の知識を活用しながら課題を解決したり,
・ 自己の考えを形成したり,
・ 新たな価値を創造したりするために必要な情報を選択し,思考していく
ことが必要になる。また,
・ 伝える相手や状況に応じた表現力を培う
ことが求められる。
また,
1. 自己の運動や健康についての課題を見付け,
2. 解決に向けて試行錯誤を重ねながら,思考を深め,
3. よりよく解決する
学びの過程である主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を推進することを通して,体育科の「思考力,判断力,表現力等」を養うことを重視するものである。
運動や健康についての自己の課題を見付けとは,
各領域の特性を踏まえ,
・ 動きや技のポイントを見付けたり,
・ 自己の行い方についての課題を見付けたり
・ することを示している。また,
健康に関わる事象や健康情報などから自己の課題を見付ける
ことを示している。
その解決に向けて思考し判断するとは,
自己の課題に応じて,運動の行い方や練習の仕方などを選んだり,応用したりすることを示している。
また,自己の健康課題について習得した知識及び技能を活用し,解決方法を考えるとともに,様々な解決方法の中からよりよい解決に向けて判断することを示している。
他者に伝えるとは,
自己の課題について,思考し判断したことを,言葉や文章及び動作などで表したり,仲間や教師などに理由を添えて伝えたりすることを示している。
(3)学びに向かう力,人間性等
運動に親しむとともに健康の保持増進と体力の向上を目指し,楽しく明るい生活を営む態度を養う。
(3) の「学びに向かう力,人間性等」は,
・ 主体的に学習に取り組む態度も含めた学びに向かう力や,
・ 自己の感情や行動を統制する能力,
・ 自らの思考の過程等を客観的に捉える力
など,いわゆる「メタ認知」に関するもの(学びに向かう力)と,
・ 多様性を尊重する態度や互いのよさを生かして協働する力,
・ 持続可能な社会づくりに向けた態度,
・ リーダーシップやチームワーク,
・ 感性,
・ 優しさや思いやり
など(人間性等)から構成されている。
運動に親しむとは,
それぞれの運動が有する特性や魅力に応じて,その楽しさや喜びを味わうとともに,
・ 公正に取り組む,
・ 互いに協力する,
・ 自己の役割を果たす,
・ 仲間の考えや取組を認める,
・ 安全に留意する
などの態度を育むことを示している。
健康の保持増進とは,
自己の健康の大切さを認識し,健康の保持増進や回復等に主体的に取り組み,健康で豊かな生活を営む態度の育成を重視する観点から,
・ 自己の健康に関心をもち,
・ 自己の健康に関する取組のよさを認める,
・ 自己の健康の保持増進や回復等のために主体的,協働的に活動する
等の態度を育成する「学びに向かう力,人間性等」の資質や能力の基礎を育成することを示したものである。
体力の向上を目指しとは,
各種の運動を適切に行うことにより,その結果として体力の向上を図ることができるようにすることを示したものである。
そのためには,発達の段階に応じて高める体力を重点化し,自己の体力や体の状態に応じた高め方を理解するとともに,学習したことを家庭などで生かすなど,体力の向上を図るための実践力を身に付けることができるようにすることが必要である。また,体力は,人間の活動の源であり,健康の維持のほか意欲や気力といった精神面の充実に大きく関わっており,「生きる力」の重要な要素であることを強調したものである。
楽しく明るい生活を営む態度とは,
生涯にわたる豊かなスポーツライフを実現するための資質・能力,健康で安全な生活を営むための実践力及び健やかな心身を育てることによって,現在及び将来の生活を健康で活力に満ちた楽しく明るいものにすることである。
また,自己の健康に関心をもち,健康の保持増進のために協力して活動すること,身近な健康や心身の発育・発達などを肯定的に捉えることなどの態度も含んでいる。
文部科学省「小学校学習指導要領解説体育編 第2章 体育科の目標及び内容 第1節 教科の目標及び内容」平成29年6月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/07/25/1387017_10_1.pdf(参照2018/03/16)を加工して作成
平成29年7月版[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/05/07/1387017_10_2.pdf(cf:2018-12-07) 確認済み
資料
体育科,保健体育科において育成を目指す資質・能力の整理
個別の知識や技能 | 思考力・判断力・表現力等 | 学びに向かう力・人間性等 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
科目体育 | 科目保健 | 科目体育 | 科目保健 | 科目体育 | 科目保健 | |
高等学校 保健体育 |
運動の特性に応じた行い方や運動の一般原則などの知識 ・技術の名称や行い方の知識 ・体力の高め方の知識 ・課題解決の方法の知識 ・伝統的な考え方の知識 ・競技会,発表会の仕方や審判の方法等の知識 など スポーツに関する科学的知識や文化的意義等の知識 各種の運動が有する特性や魅力及び目的に応じた技能 ・知識を踏まえて,運動の技能として発揮したり,身体表現したりする |
個人及び社会生活における健康・安全についての総合的な知識や技能 ・現代社会に生じた健康課題の解決に役立つ知識,健康な生活と疾病の予防に関する知識(一次予防だけでなく二次予防,三次予防も含む) ・ライフステージにおける健康を踏まえた生涯を通じる健康の知識 ・社会生活と健康に関する知識 ・社会資源の活用,応急手当に関する技能 |
自己や仲間の課題に応じた運動を継続するための取組方を工夫できる思考力・判断力・表現力 ・自己や仲間の挑戦する運動課題を設定する力 ・技術的な課題や有効な練習方法について指摘する力 ・運動実践の場面で,課題解決の過程を踏まえて,自己や仲間の課題を見直す力 ・運動実践の場面で,自己や仲間の危険を予測し回避するための活動の仕方を選ぶ力 ・状況に応じた自己や仲間の役割を設定する力 ・作戦などの話し合いの場面で,合意を形成するための調整の仕方を見付ける力 ・運動やスポーツを生涯にわたって楽しむための,スポーツとの多様な関わり方を見付ける力 ・思考・判断したことを,根拠を示し示したり他者に配慮したりして,相手に伝えたり表現したりする力 など |
健康課題の解決を目指して,情報を批判的に捉えたり,論理的に考えたりして,適切に意思決定・行動選択する力 ・社会生活に関わる健康課題を発見する力 ・社会生活に関わる健康情報を収集,分析する力 ・社会背景や置かれている状況に応じて解決方法を考える力 ・解決方法を活用し,健康な社会づくりを目指して適切に意思決定・行動選択する力 ・健康な社会づくりに必要な知識や技能,健康の考えや解決策を社会へ伝える力 |
生涯にわたって豊かなスポーツライフを継続し,明るく豊かで活力ある生活を営む態度 ・運動の楽しさや喜びを深く味わい,主体的に取り組む態度 ・運動の合理的,計画的な実践を通して,多様性を尊重し,公正に取り組む,仲間と主体的にかかわり協力する,役割に責任をもって取り組む,意思決定などに参画するなどの意欲を持つ ・相手を尊重し,伝統的な行動の仕方を大切にしようとする ・運動実践の場面で,健康・安全を確保する ・スポーツとの多様な関わり方を状況に応じて選択し,卒業後も継続して実践することができる態度 など |
健康の保持増進のための実践力を育成し,明るく豊かで活力ある生活を営む態度 ・社会生活に関わる健康づくりに関心をもつ ・社会生活において健康・安全を優先する ・自他の健康の保持増進や回復及び健康な社会づくりに参画する |
体育分野 | 保健分野 | 体育分野 | 保健分野 | 体育分野 | 保健分野 | |
中学校 保健体育 |
運動の特性に応じた行い方や運動の一般原則などの知識 ・技術の名称や行い方の知識 ・運動の特性や成り立ちの知識 ・体力の要素や高め方の知識 ・運動観察の方法の知識 ・伝統的な考え方の知識 など スポーツに関する科学的知識や文化的意義等の基礎的な知識各種の運動が有する特性や魅力に応じた基本的な技能 ・知識を踏まえて,基本的な運動の技能として発揮したり,身体表現したりする |
個人生活における健康・安全についての科学的な知識や技能 ・現代的な健康課題を踏まえた心身の機能の発達と心の健康,健康と環境,傷害の防止,健康な生活と疾病の予防に関する知識 ・ストレス対処,応急手当に関する基礎的な技能 |
自己の課題に応じた運動の取組方を工夫できる思考力・判断力・表現力 ・自己の課題に応じた運動の行い方の改善すべきポイントを見付ける力 ・運動実践の場面で,自己の課題に応じて,適切な練習方法を選ぶ力 ・運動実践の場面で,健康や安全を確保するために,体調に応じて適切な活動を選ぶ力 ・状況に応じた自己や仲間の役割を見付ける力 ・作戦などの話し合いの場面で,合意を形成するための適切なかかわり方を見付ける力 ・運動を継続して楽しむための,スポーツとの多様な関わり方を見付ける力 ・思考・判断したことを,根拠を示しながら相手に伝えたり表現したりする力 など |
健康課題を把握し,適切な情報を選択,活用し,課題解決のために適切な意思決定をする力 ・自他の健康課題を発見する力 ・健康情報を収集し,批判的に吟味する力 ・健康情報や知識を活用して多様な解決方法を考える力 ・多様な解決方法の中から,適切な方法を選択・決定し,自他の生活に生かす力 ・自他の健康の考えや解決策を対象に応じて表現する力 |
生涯にわたって運動に親しみ,明るく豊かな生活を営む態度 ・運動の楽しさや喜びを味わい,自主的に学習活動に取り組む態度 ・運動における競争や協同の場面を通して,多様性を認識し,公正に取り組む,互いに協力する,自己の責任を果たす,参画するなどの意欲を持つ ・相手を尊重し伝統的な行動の仕方を大切にしようとする ・運動実践の場面で,健康・安全を確保する ・スポーツとの多様な関わり方を場面に応じて選択し,実践することができる態度 など |
健康の保持増進のための実践力を育成し,明るく豊かな生活を営む態度 ・自他の健康に関心をもつ ・自他の健康に関する取組のよさを認める ・自他の健康の保持増進や回復のために協力して活動する ・自他の健康の保持増進に主体的に取り組む |
運動領域 | 保健領域 | 運動領域 | 保健領域 | 運動領域 | 保健領域 | |
小学校 体育 |
各種の運動が有する特性や魅力に応じた知識や技能 ・各種の運動の行い方に関する基礎的な知識 ・各種の運動を行うための基本的な技能 |
身近な生活における健康・安全についての基礎的な知識や技能 ・健康な生活,発育・発達,心の健康,けがの防止,病気の予防に関する基礎的な知識 ・不安や悩みの対処やけがの手当に関する基礎的な技能 |
自己の能力に適した課題をもち,活動を選んだり工夫したりする思考力・判断力・表現力等 ・自己の能力に適した課題に気付く力 ・自己の課題を解決するための活動を選んだり,運動の行い方を工夫したりする力 ・思考し判断したことを,言葉や動作等で他者に伝える力 |
身近な健康課題に気付き,健康を保持増進するための情報を活用し,課題解決する力 ・身近な健康課題に気付く力 ・健康課題に関する情報を集める力 ・健康課題の解決方法を予想し考える力 ・学んだことを自己の生活に生かす力 ・学んだことや健康に関する自分の考えを伝える力 |
運動の楽しさや喜びを味わい,明るく楽しい生活を営むための態度 ・進んで学習活動に取り組む ・約束を守り,公正に行動する ・友達と協力して活動する ・自分の役割を果たそうとする ・友達の考えや取組を認める ・安全に気を配る |
健康の大切さを認識し,健康で楽しく明るい生活を営む態度 ・自己の健康に関心をもつ ・自己の健康の保持増進のために協力して活動する ・自他の心身の発育・発達などを肯定的に捉える |
※ 中央教育審議会「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)別添資料(2/3)別添12-1 体育科,保健体育科において育成を目指す資質・能力の整理〈小学校〉〈中学校〉高等学校〉」平成28年12月21日[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/10/13/1387018_6.pdf(参照2018/04/05)