- 平成29年告示の中学校学習指導要領外国語科の目標は,どのようなものでしょうか。
- 中学校外国語科では,「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力」の育成を目指します。
外国語で表現し伝え合うため,外国語やその背景にある文化を,社会や世界,他者との関わりに着目して捉え,コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,再構築する外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせることが重要です。
これは,小学校・中学校で共通しています。
掲載の趣旨
平成29年告示の学習指導要領では,資質・能力や内容などの全体像を分かりやすく見渡せるよう,枠組みが大きく見直され「学びの地図」として整理されました。
その趣旨に添い,本稿では,解説本文を次のように編集しています。
・ 目標解説の内容が捉えやすいように原文を装飾
・ 他教科等・他学校種の目標や解説が比較しやすように編集
具体的には,本文は原文通りで,次のように編集しています。
・ 各教科等の目標の解説を共通した章立てで構成
・ 学校種間の対応する内容についてリンクで移動 など
掲載の趣旨の詳細は,下のボタンより参照できます。
なお,本稿は,「文部科学省ウェブサイト利用規約」(2018年3月1日に利用)に基づいて,原本を加工し作成しています。
小学校・中学校各教科等の目標の解説 「小・中学校「教科等の目標解説を縦横に読む」シリーズ」は,下のボタンより閲覧できます。
中学校 外国語科の目標
1 教科の目標
(1)目標
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1) 外国語の音声や語彙,表現,文法,言語の働きなどを理解するとともに,これらの知識を,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能を身に付けるようにする。
(2) コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,日常的な話題や社会的な話題について,外国語で簡単な情報や考えなどを理解したり,これらを活用して表現したり伝え合ったりすることができる力を養う。
(3) 外国語の背景にある文化に対する理解を深め,聞き手,読み手,話し手,書き手に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。
※ 平成20年中学校学習指導要領「外国語」目標
「外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,聞くこと,話すこと,読むこと,書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う。」
※ 平成10年中学校学習指導要領「外国語」目標
「外国語を通じて,言語や文化に対する理解を深め,積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り,聞くことや話すことなどの実践的コミュニケーション能力の基礎を養う。」
※ 平成元年中学校学習指導要領「外国語」目標
「外国語を理解し,外国語で表現する基礎的な能力を養い,外国語で積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てるとともに,言語や文化に対する関心を深め,国際理解の基礎を培う。」
(2)目標の構成
外国語科では,次のように目標を設定した。
外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
外国語科の目標は,「簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力」を育成することである。
このためには,次の(1)(2)(3)に示す
・ 「知識及び技能」,
・ 「思考力,判断力,表現力等」,
・ 「学びに向かう力,人間性等」
それぞれに関わる外国語特有の資質・能力を育成する必要があり,その際,外国語教育の特質に応じて,生徒が物事を捉え,思考する「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」を働かせることが重要である。
2 柱書
(1)見方・考え方
「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方」とは,
外国語によるコミュニケーションの中で,どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していくのかという,物事を捉える視点や考え方であり,
「外国語で表現し伝え合うため,外国語やその背景にある文化を,社会や世界,他者との関わりに着目して捉え,
コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,再構築すること」
であると考えられる。
外国語やその背景にある文化を,社会や世界,他者との関わりに着目して捉えるとは,
外国語で他者とコミュニケーションを行うには,
・ 社会や世界との関わりの中で事象を捉えたり,
・ 外国語やその背景にある文化を理解する
などして相手に十分配慮したりすることが重要であることを示している。
また,コミュニケーションを行う目的や場面,状況等に応じて,情報を整理しながら考えなどを形成し,再構築することとは,
多様な人々との対話の中で,目的や場面,状況等に応じて,
・ 既習のものも含めて習得した概念(知識)を相互に関連付けてより深く理解したり,
・ 情報を精査して考えを形成したり,
・ 課題を見いだして解決策を考えたり,
・ 身に付けた思考力を発揮させたりする
ことであり,「外国語で表現し伝え合う」ためには,適切な言語材料を活用し,思考・判断して情報を整理するとともに,自分の考えなどを形成,再構築することが重要であることを示している。
外国語によるコミュニケーションの一連の過程を通して,このような「見方・考え方」を働かせながら,自分の思いや考えを表現することなどを通じて,生徒の発達の段階に応じて「見方・考え方」を豊かにすることが重要である。
この 「見方・考え方」を確かで豊かなものとすることで,学ぶことの意味と自分の生活,人生や社会,世界の在り方を主体的に結び付ける学びが実現され,学校で学ぶ内容が,生きて働く力として育まれることになる。
さらに,こうした学びの過程が外国語教育の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善につながる。その鍵となるものが,教科等の特質に応じた「見方・考え方」である。
ところで,言語能力について,中央教育審議会答申では,
「言葉は,学校という場において子供が行う学習活動を支える重要な役割を果たすものであり,全ての教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となるものである。したがって,言語能力の向上は,学校における学びの質や,教育課程全体における資質・能力の育成の在り方に関わる課題」
であるとし,その育成が求められている。
このことを踏まえれば,中学校の外国語科においては,言語の役割として,創造的・論理的思考の側面,感性・情緒の側面,他者とのコミュニケーションの側面があることに留意し,特に他者とのコミュニケーションに焦点を当てて指導することが重要である。
※ 【英訳(仮訳)】中学校学習指導要領では,「各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(以下「見方・考え方」という。)」を「discipline-based epistemological approaches, hereinafter referred to as “Approaches”」と訳す。見方・考え方を“Approaches”で代表している。このことを考え合わせると見方・考え方の意味がより一層捉えやすくなる。すなわち,見方・考え方は,物事を認識するときの入り方,近づき方,せまり方と言い換えることができる。
引用:文部科学省「平成29年改訂中学校学習指導要領英訳版(仮訳)」[ONLINE]https://www.mext.go.jp/content/20200227-mxt_kyoiku02-100002604_2.pdf(cf:2020.05.26)
(2)学び方
「外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して」とは,教科の目標を実現するために必要な指導事項について述べたものであり,本解説第2章第2節2(3)で詳細を解説する。
「中学校学習指導要領 第9節外国語 第2各言語の目標及び内容等英語 2内容(3)言語活動及び言語の働きに関する事項 言語活動に関する事項」
(3)資質・能力
「簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力」が外国語科の目標の中心となる部分である。
外国語の音声や文字を使って実際にコミュニケーションを図る資質・能力であり,
・ 理解する
・ 表現する
・ 伝え合う
という三つの要素に整理した。
「理解する」,「表現する」という単に受け手となったり送り手となったりする単方向のコミュニケーションだけでなく,「伝え合う」という双方向のコミュニケーションも重視している。
また,今回の改訂で,小学校に新たに外国語科が導入されたことを踏まえ,小学校における学習との接続に一層留意する必要がある。
中学校の外国語科の目標である「コミュニケーションを図る資質・能力」の育成は,小学校の外国語科において「コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力」の育成を目標としていることを踏まえて設定されたものであり,総則にもあるように,小学校までの学習の成果が中学校教育に円滑に接続され,育成を目指す資質・能力を生徒が確実に身に付けることができるよう工夫する必要がある。
改訂前の外国語科の目標においては,
① 言語や文化に対する理解
② 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度
③ 聞くこと,話すこと,読むこと,書くことなどのコミュニケーション能力の基礎
の三つの事項を念頭に置いていたが,今回の改訂では,上記の目標を基に,育成を目指す資質・能力の三つの柱である「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」及び「学びに向かう力,人間性等」のそれぞれに関わる目標を,以下(1)(2)(3)のように明確に設定している。
3 三つの柱
(1)知識及び技能
外国語の音声や語彙,表現,文法,言語の働きなどを理解するとともに,これらの知識を,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能を身に付けるようにする。
(1)は,外国語科における「何を理解しているか,何ができるか」という「知識及び技能」の習得に関わる目標として掲げたものである。
本目標は,
・ 「外国語の音声や語彙,表現,文法,言語の働きなどを理解する」という「知識」の面と,
・ その知識を「聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる」という「技能」の面と
で構成されている。
中央教育審議会答申にもあるとおり,ここでは「生きて働く『知識・技能』の習得」を重視している。
① 知識
本目標での「(外国語の音声や語彙,表現,文法,言語の働きなどを)理解する」とは,
基礎的・基本的な知識を確実に習得しながら,既存の知識と関連付けたり組み合わせたりしていくことにより,学習内容の深い理解と,個別の知識の定着を図るとともに,社会における様々な場面で活用できる概念としていくことである。
② 技能
また,「(聞くこと,読むこと,話すこと,書くこ とによる実際のコミュニケーションにおいて)活用できる技能を身に付ける」とは,
一定の手順や段階を追って身に付く個別の技能のみならず,獲得した個別の技能が自分の経験やほかの技能と関連付けられ,変化する状況や課題に応じて主体的に活用できる技能として習熟・熟達していくということである。
③ 小学校との接続
小学校の外国語科においては,「聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付ける」とあり,中学校の外国語科で身に付けるべき「知識及び技能」の基礎的なものを 身に付けることとなる。
ただし,「読むこと」,「書くこと」については,「読むこと,書くことに慣れ親しみ」としており,「聞くこと」,「話すこと」と同等の指導を求めるものではないことに留意する必要があり,中学校卒業時には,「聞くこと」,「読むこと」,「話すこと」及び「書くこと」の技能を総合的に育成しておかなければならない。
(2)思考力,判断力,表現力等
コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,日常的な話題や社会的な話題について,外国語で簡単な情報や考えなどを理解したり,これらを活用して表現したり伝え合ったりすることができる力を養う。
(2)は,外国語科における「理解していること・できることをどう使うか」という「思考力,判断力,表現力等」の育成に関わる目標として掲げたものである。
コミュニケーションを行う際は,その「目的や場面,状況など」を意識する必要があり,その上で,「簡単な情報や考えなどを理解」したり,理解したことを活用して「表現したり伝え合ったりする」ことが重要になってくる。「思考力,判断力,表現力等」の育成のためには,外国語を実際に使用することが不可欠である。
中央教育審議会答申では,「未知の状況にも対応できる『思考力・判断力・表現力等』の育成」のため,思考・判断・表現の過程として
「精査した情報を基に自分の考えを形成し,文章や発話によって表現したり,目的や場面,状況等に応じて互いの考えを適切に伝え合い,多様な考えを理解したり,集団としての考えを形成したりしていく過程」
などに言及している。
言語は通常,人との関わりの中で用いられるため,他者を尊重し,聞き手,読み手,話し手,書き手に配慮しながらコミュニケーションを図ることが求められる。
例えば,コミュニケーションの目的に応じて聞き手の理解の状況を確認しな がら話しているか,相手の発話に反応しながら聞き続けようとする態度を示しているかなど,相手への配慮が求められることになる。
これまでの課題を踏まえると,外国語教育の特性として「コミュニケーションを行う目的や場面,状況など」 を設定し,生徒が理解し,外国語で表現し伝え合う力を育成するための学習過程の改善・充実を図る必要がある。
外国語教育における学習過程としては,
① 設定されたコミュニケーションの目的や場面,状況等を理解する,
② 目的に応じて情報や意見などを発信するまでの方向性を決定し,コミュニケーションの見通しを立てる,
③ 目的達成のため,具体的なコミュニケーションを行う,
④ 言語面・内容面で自ら学習のまとめと振り返りを行う,
といった流れの中で,学んだことの意味付けを行ったり,既得の知識や経験と,新たに得られた知識を言語活動で活用したりすることで,「思考力,判断力,表現力等」を高めていくことが大切になる。
本目標での「コミュニケーションを行う目的や場面,状況など」とは,
・ コミュニケーションを行うことによって達成しようとする目的や,
・ 話し手や聞き手を含む発話の場面,
・ コミュニケーションを行う相手との関係性や
・ コミュニケーションを行う際の環境
のことを指す。こうした「目的や場面,状況など」は,外国語を適切に使用するために必要不可欠である。
例えば,ある情報を得るために読む際には,単に一つの情報をうのみにするのではなく,他の情報と比べるなどして精査する必要がある。また,意見を述べる際には,考えを整理したり話す内容の構成を考えたり,相手に応じた表現を選択したりする。
このように,「目的や場面,状況など」に応じた言語の運用を考えることで,「思考力,判断力,表現力等」が育成される。
本目標での「日常的な話題」とは,生徒の日々の生活に関わる話題のこと,「社会的な話題」とは,社会で起こっている出来事や問題に関わる話題のことである。小学校の外国語科では「身近で簡単な事柄」を扱うのに対し,中学校ではこれらの様々な話題を取り上げることにより,「コミュニケーションを行う目的や場面,状況など」をより幅広く設定することができる。
「簡単な情報や考えなどを理解する」とは,
コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,何を聞き取るべきなのか,読み取らなければならない内容は何なのか,を判断し,「聞くこと」や「読むこと」を通して情報や考えなどを理解することである。
「これらを活用して表現したり伝え合ったりする」については,
そうやって理解した情報や考えなどを整理した上で,コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,何をどのように取り上げるかを既存の知識や体験などとも関連付けながら判断し,「話すこと」や「書くこと」を通して表現したり伝え合ったりすることである。
小学校の外国語科では,「自分の考えや気持ちなどを伝え合うことができる基礎的な力」とあり,中学校で身に付けるべき「思考力,判断 力,表現力等」の基礎的なものを身に付けることとなる。
このことを踏まえ,未知の状況にも対応できる「思考力,判断力,表現力等」を育成するためには,第2章第2節2(1)〔知識及び技能〕で解説する言語材料を活用し,第2章第2節2(3)で解説するとおり,言語の使用場面に応じて具体的な言語の働きを取り上げ,言語活動を行うことが必要である。
(3)学びに向かう力,人間性等
外国語の背景にある文化に対する理解を深め,聞き手,読み手,話し手,書き手に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。
(3)は,外国語科における「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか」という「学びに向かう力,人間性等」の涵養に関わる目標として掲げたものである。
「文化に対する理解」やコミュニケーションの相手となる「聞き手,読み手,話し手,書き手」に対して「配慮」しながら,「主体的にコミュニ ケーションを図ろうとする態度」を身に付けることを目標としている。
中央教育審議会答申では,この「学びを人生や社会に生かそうとする『学びに向かう力・人間性等』の涵養」を重視し,(1)「知識及び技能」や(2)「思考力,判断力,表現力等」の資質・能力をどのような方向性で働かせていくかを決定付ける重要な要素とされている。
外国語教育における「学びに向かう力,人間性等」は,生徒が言語活動に主体的に取り組むことが外国語によるコミュニケーションを図る資質・能力を身に付ける上で不可欠であるため,極めて重要な観点である。
「知識及び技能」を実際のコミュニケーションの場面において活用し,考えを形成・深化させ,話したり書いたりして表現することを繰り返すことで,生徒に自信が生まれ,主体的に学習に取り組む態度が一層向上するため,「知識及び技能」及び「思考力,判断力,表現力等」と「学びに向かう力,人間性等」は不可分に結び付いている。生徒が興味をもって取り組むことができる言語活動を易しいものから段階的に取り入れたり,自己表現活動の工夫をしたりするなど,様々な手立てを通じて生徒の主体的に学習に取り組む態度の育成を目指した指導をすることが大切である。
本目標での「外国語の背景にある文化に対する理解を深め」については,改訂前は「言語や文化に対する理解を深め」となっており,その「文化」を「その言語の背景にある文化」と解説していたことから,今回の改訂においてはその意味合いを明確に示した。
また,「言語」を外して「(外国語の背景にある)文化に対する理解」としたのは,「コミュニケーションを図ろうとする態度」を養う上では,次に述べる「聞き手,読み手,話し手,書き手に配慮しながら」コミュニケーションを図ることが大切であり,その一つとして相手の外国語の文化的背景によって「配慮」の仕方も異なってくることが考えられるためである。併せて,外国語の学習を通して,他者を配慮し受け入れる寛容の精神や平和・国際貢献などの精神を獲得し,多面的思考ができるような人材を育てることも必要である。
「聞き手,読み手,話し手,書き手に配慮しながら」については,(2)でも述べたとおり,
例えば「話すこと」や「聞くこと」の活動であれば,相手の理解を確かめながら話したり,相手が言ったことを共感的に受け止める言葉を返しながら聞いたりすることなどが考えられる。
小学校の外国語科では「他者に配慮しながら」としているのに対し,中学校においては,五つの領域にわたってコミュニケーションを図る資質・能力をバランスよく育成することや,領域統合型の言語活動を重視していることなどから,特に「聞き手,読み手,話し手,書き手」としている。
また,改訂前は「積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度」としていたものを,今回の改訂で「主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度」としたことに留意する必要がある。
「主体的に外国語を用いてコミ ュニケーションを図ろうとする態度」とは,
・ 単に授業等において積極的に外国語を使ってコミュニケーションを図ろうとする態度のみならず,
・ 学校教育外においても,生涯にわたって継続して外国語習得に取り組もうとするといった態度
を養うことを目標としている。
これは,学校教育法において,学力の重要な要素として「生涯にわたり学習する基盤が培われるよう」,「主体的に学習に取り組む態度」を養うことを掲げていることを踏まえたものである。
このことを踏まえ,学びを人生や社会に生かそうとする「学びに向かう力,人間性等」は,(1)「知識及び技能」及び(2)「思考力,判断力,表現力等」の資質・能力を一体的に育成する過程を通して育成する必要がある。
出典:文部科学省「中学校学習指導要領解説外国語編 第2章 外国語科の目標及び内容 第1節 外国語科の目標」平成29年7月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/03/07/1387018_10.pdf(参照2018/04/07)を加工して作成
文部科学省「中学校学習指導要領解説外国語編 第2章 外国語科の目標及び内容 第1節 外国語科の目標」平成29年7月ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/05/07/1387018_10_1.pdf(cf:2018-12-18)確認済み
資料
言語活動に関する事項
① 言語活動に関する事項
(2)に示す事項については,(1)に示す事項を活用して,例えば次のような言語活動を通して指導する。
ア 小学校学習指導要領第2章第10節外国語の第2の2の(3)に示す言語活動のうち,小学校における学習内容の定着を図るために必要なもの。
イ 聞くこと
(ア) 日常的な話題について,自然な口調で話される英語を聞いて,話し手の意向を正確に把握する活動。
(イ) 店や公共交通機関などで用いられる簡単なアナウンスなどから,自分が必要とする情報を聞き取る活動。
(ウ) 友達からの招待など,身近な事柄に関する簡単なメッセージを聞いて,その内容を把握し,適切に応答する活動。
(エ) 友達や家族,学校生活などの日常的な話題や社会的な話題に関する会話や説明などを聞いて,概要や要点を把握する活動。また,その内容を英語で説明する活動。
ウ 読むこと
(ア) 書かれた内容や文章の構成を考えながら黙読したり,その内容を表現するよう音読したりする活動。
(イ) 日常的な話題について,簡単な表現が用いられている広告やパンフレット,予定表,手紙,電子メール,短い文章などから,自分が必要とする情報を読み取る活動。
(ウ) 簡単な語句や文で書かれた日常的な話題に関する短い説明やエッセイ,物語などを読んで概要を把握する活動。
(エ) 簡単な語句や文で書かれた社会的な話題に関する説明などを読んで,イラストや写真,図表なども参考にしながら,要点を把握する活動。また,その内容に対する賛否や自分の考えを述べる活動。
エ 話すこと[やり取り]
(ア) 関心のある事柄について,相手からの質問に対し,その場で適切に応答したり,関連する質問をしたりして,互いに会話を継続する活動。
(イ) 日常的な話題について,伝えようとする内容を整理し,自分で作成したメモなどを活用しながら相手と口頭で伝え合う活動。
(ウ) 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことから把握した内容に基づき,読み取ったことや感じたこと,考えたことなどを伝えた上で,相手からの質問に対して適切に応答したり自ら質問し返したりする活動。
オ 話すこと[発表]
(ア) 関心のある事柄について,その場で考えを整理して口頭で説明する活動。
(イ) 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどをまとめ,簡単なスピーチをする活動。
(ウ) 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことから把握した内容に基づき,自分で作成したメモなどを活用しながら口頭で要約したり,自分の考えや気持ちなどを話したりする活動。
カ 書くこと
(ア) 趣味や好き嫌いなど,自分に関する基本的な情報を語句や文で書く活動。
(イ) 簡単な手紙や電子メールの形で自分の近況などを伝える活動。
(ウ) 日常的な話題について,簡単な語句や文を用いて,出来事などを説明するまとまりのある文章を書く活動。
(エ) 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことから把握した内容に基づき,自分の考えや気持ち,その理由などを書く活動。
※出典:文部科学省「中学校学習指導要領 第9節外国語 第2各言語の目標及び内容等英語 2内容(3)言語活動及び言語の働きに関する事項 言語活動に関する事項」平成29年3月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/03/29/1384661_5_2.pdf(参照2018/04/07)
外国語活動・外国語科における小・中・高の目標の比較
柱書 | 知識・技能 | 思考力・判断力・表現力等 | 学びに向かう力・人間性等 | |
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高等学校 | 外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動及びこれらを結び付けた統合的な言語活動を通して,情報や考えなどを的確に理解したり適切に表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を次のとおり育成する ことを目指す。 | (1) 外国語の音声や語彙,表現,文法,言語の働きなどの理解を深めるとともに,これらの知識を,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて,目的や場面,状況などに応じて適切に活用できる技能を身に付けるようにする。 | (2) コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,日常的な話題や社会的な話題について,外国語で情報や考えなどの概要や要点,詳細,話し手や書き手の意図などを的確に理解したり,これらを活用して適切に表現したり伝え合ったりすることができる力を養う。 | (3) 外国語の背景にある文化に対する理解を深め,聞き手,読み手,話し手,書き手に配慮しながら,主体的,自律的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。 |
中学校 | 外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,簡単な情報や考えなどを理解したり表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 | (1) 外国語の音声や語彙,表現,文法,言語の働きなどを理解するとともに,これらの知識を,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能を身に付けるようにする。 | (2) コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,日常的な話題や社会的な話題について,外国語で簡単な情報や考えなどを理解したり,これらを活用して表現したり伝え合ったりすることができる力を養う。 | (3) 外国語の背景にある文化に対する理解を深め,聞き手,読み手,話し手,書き手に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。 |
小学校高学年 | 外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,読むこと,話すこと,書くことの言語活動を通して,コミュニケーションを図る基礎となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 | (1) 外国語の音声や文字,語彙,表現,文構造,言語の働きなどについて,日本語と外国語との違いに気付き,これらの知識を理解するとともに,読むこと,書くことに慣れ親しみ,聞くこと,読むこと,話すこと,書くことによる実際のコミュニケーションにおいて活用できる基礎的な技能を身に付けるようにする。 | (2) コミュニケーションを行う目的や場面,状況などに応じて,身近で簡単な事柄について,聞いたり話したりするとともに,音声で十分に慣れ親しんだ外国語の語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり,語順を意識しながら書いたりして,自分の考えや気持ちなどを伝え合うことができる基礎的な力を養う。 | (3) 外国語の背景にある文化に対する理解を深め,他者に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。 |
小学校中学年 | 外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ,外国語による聞くこと,話すことの言語活動を通して,コミュニケーションを図る素地となる資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 | (1) 外国語を通して,言語や文化について体験的に理解を深め,日本語と外国語との音声の違い等に気付くとともに,外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しむようにする。 | (2) 身近で簡単な事柄について,外国語で聞いたり話したりして自分の考えや気持ちなどを伝え合う力の素地を養う。 | (3) 外国語を通して,言語やその背景にある文化に対する理解を深め,相手に配慮しながら,主体的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。 |
※ 出典:文部科学省「高等学校学習指導要領 第2章各学科に共通する各教科第8節外国語第1款目標」平成30年3月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/03/29/1384661_6_1.pdf(参照2018/04/07)
※ 出典:文部科学省「中学校学習指導要領 第2章各教科第9節外国語第1目標」平成29年3月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/03/29/1384661_5_2.pdf(参照2018/04/07)
※ 出典:文部科学省「小学校学習指導要領 第2章各教科第10節外国語第1目標,第4章外国語活動第1目標」平成29年3月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/03/29/1384661_4_2.pdf(参照2018/04/07)