- 平成29年告示の小学校学習指導要領生活科の目標は,どのようなものでしょうか。
- 生活科では,「具体的な活動や体験を通して,身近な生活に関わる見方・考え方を生かし, 自立し生活を豊かにしていくための資質・能力」の育成を目指します。
生活科は,活動や体験が前提です。児童が体全体で身近な環境に直接働きかける創造的な行為が行われるようにすることを重視します。
その中で,自分自身についての気付きを大切にして,
・ 学習上の自立,
・ 生活上の自立,
・ 精神的な自立
という三つの自立への基礎を養うことを目指します。
生活科は,平成元年学習指導要領での導入以降,「自立への基礎を養う」理念は引き継いでいます。
掲載の趣旨
平成29年告示の学習指導要領では,資質・能力や内容などの全体像を分かりやすく見渡せるよう,枠組みが大きく見直され「学びの地図」として整理されました。
その趣旨に添い,本稿では,解説本文を次のように編集しています。
・ 目標解説の内容が捉えやすいように原文を装飾
・ 他教科等・他学校種の目標や解説が比較しやすように編集
具体的には,本文は原文通りで,次のように編集しています。
・ 各教科等の目標の解説を共通した章立てで構成
・ 学校種間の対応する内容についてリンクで移動 など
掲載の趣旨の詳細は,下のボタンより参照できます。
なお,本稿は,「文部科学省ウェブサイト利用規約」(2018年3月1日に利用)に基づいて,原本を加工し作成しています。
小学校・中学校各教科等の目標の解説 「小・中学校「教科等の目標解説を縦横に読む」シリーズ」は,下のボタンより閲覧できます。
小学校 生活科の目標
1 教科目標
(1)目標
教科の特質や目指すところを端的に示したのが教科目標である。
生活科の教科目標は次のとおりである。
具体的な活動や体験を通して,身近な生活に関わる見方・考え方を生かし,自立し生活を豊かにしていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
⑴ 活動や体験の過程において,自分自身,身近な人々,社会及び自然の特徴やよさ,それらの関わり等に気付くとともに,生活上必要な習慣や技能を身に付けるようにする。
⑵ 身近な人々,社会及び自然を自分との関わりで捉え,自分自身や自分の生活について考え,表現することができるようにする。
⑶ 身近な人々,社会及び自然に自ら働きかけ,意欲や自信をもって学んだり生活を豊かにしたりしようとする態度を養う。
※ 平成10及び20年告示小学校学習指導要領「生活科」の目標
「具体的な活動や体験を通して,自分と身近な人々,社会及び自然とのかかわりに関心をもち,自分自身や自分の生活について考えさせるとともに,その過程において生活上必要な習慣や技能を身に付けさせ,自立への基礎を養う。」
※ 平成元年告示小学校学習指導要領「生活科」の目標 (本指導要領で生活科創設)
「具体的な活動や体験を通して,自分と身近な社会や自然とのかかわりに関心をもち,自分自身や自分の生活について考えさせるとともに,その過程において生活上必要な習慣や技能を身に付けさせ,自立への基礎を養う。」
(2)教科目標の構成
教科目標は,大きく分けて二つの要素で構成されている。
・ 一つは,生活科の前提となる特質,生活科固有の見方・考え方,生活科における究極的な児童の姿である。
・ もう一つは,⑴,⑵,⑶として示している,生活科を通して育成することを目指す資質・能力である。
育成することを目指す資質・能力は,
・ ⑴では生活科において育成を目指す「知識及び技能の基礎(生活の中で,豊かな体験を通じて,何を感じたり,何に気付いたり,何が分かったり,何ができるようになったりする)」を,
・ ⑵では「思考力,判断力,表現力等の基礎(生活の中で,気付いたこと,できるようになったことを使って,どう考えたり,試したり,工夫したり,表現したりするか)」を,
・ ⑶では「学びに向かう力,人間性等(どのような心情,意欲,態度などを育み,よりよい生活を営むか)」を示している。
⑴と⑵に示した資質・能力の末尾に「の基礎」とあるのは,幼児期の学びの特性を踏まえ,育成を目指す三つの資質・能力を截(せつ)然と分けることができないことによる。
このことは,生活科が教育課程において,幼児期の教育と小学校教育とを円滑に接続するという機能をもつことを明示している。
生活科の目指すところは,教科目標の特定の部分ではなく,全体において示されている。
自立し生活を豊かにしていくための資質・能力は,一つ一つの単元や授業などにおいて,総合的に育成されていくものである。
このような生活科の教科目標の構成は,下図のように示すことができる。
〔育成を目指す資質・能力〕 |
生活科の教科目標の構成
(3)目標の背景
この生活科の教科目標は,これまでと同様に次の点を背景にしている。
○ 児童の生活圏としての学校,家庭,地域を学習の対象や場とし,そこでの児童の生活から学習を出発させ,学習したことが,学校,家庭,地域での児童の生活に生きていくようにする。
○ 児童が身近な人々,社会及び自然と直接関わる活動や体験を重視し,児童が自分の思いや願いを生かし,主体的に活動することができるようにするとともに,そうした活動の楽しさや満足感,成就感を実感できるようにする。
○ 児童が身近な人々,社会及び自然と直接関わる中で,それらについて気付くことができるようにするとともに,そこに映し出される自分自身や自分の生活について気付くことができるようにする。
このような生活科の学習を通して,児童が自ら自立し生活を豊かにすることを目指している。
2 柱書
教科目標の趣旨
具体的な活動や体験を通して,身近な生活に関わる見方・考え方を生かし,自立し生活を豊かにしていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。
(1)学び方
具体的な活動や体験を通すこと
ここでいう具体的な活動や体験とは,
例えば,見る,聞く,触れる,作る,探す,育てる,遊ぶなどして対象に直接働きかける学習活動であり,
また,そうした活動の楽しさやそこで気付いたことなどを言葉,絵,動作,劇化などの多様な方法によって表現する学習活動である。
教科目標の冒頭に具体的な活動や体験を通してとあるのは,
生活科の学習はそうした活動や体験をすることを前提にしていることを示している。
すなわち,生活科は,児童が体全体で身近な環境に直接働きかける創造的な行為が行われるようにすることを重視しているのである。
直接働きかけるということは,
児童が身近な人々,社会及び自然に一方的に働きかけるのではなく,それらが児童に働き返してくるという,双方向性のある活動が行われることを意味する。
小学校低学年の児童は,その発達の特性から,対象と直接関わり,対象とのやり取りをする中で,資質・能力が育成されることを目的としている。
一方,中央教育審議会答申では,全ての教科等における言語能力の育成についても指摘されている。
生活科においては,児童が対象に直接働きかける具体的な活動や体験を通して,対象から様々な情報を取り出し,表現したいという意欲が生まれるようにすることが大切である。
したがって,具体的な活動や体験の充実を促すとともに,言葉などによる振り返りや伝え合いの場を適切に設定することも大切である。
(2)見方・考え方
身近な生活に関わる見方・考え方を生かすこと
目標には,これまでにはなかった見方・考え方という記述が加わっている。
ここでいう見方・考え方とは,各教科等における学びの過程で「どのような視点で物事を捉え,どのような考え方で思考していくのか」ということであり,各教科等を学ぶ本質的な意義でもある。また,大人になって生活していくに当たっても重要な働きをするものであり,教科等の教育と社会とをつなぐものでもある。
生活科における見方・考え方は,身近な生活に関わる見方・考え方であり,それは
身近な人々,社会及び自然を自分との関わりで捉え,よりよい生活に向けて思いや願いを実現しようとすること
であると考えられる。
身近な生活に関わる見方は,
身近な生活を捉える視点であり,身近な生活における人々,社会及び自然などの対象と自分がどのように関わっているのかという視点である。
また,
身近な生活に関わる考え方は,
自分の生活において思いや願いを実現していくという学習過程にあり,自分自身や自分の生活について考えていくことである。
具体的な活動を行う中で,身近な生活を自分との関わりで捉え,よりよい生活に向けて思いや願いを実現しようとするようになり,そこでは,「思考」や「表現」が一体的に繰り返し行われ,自立し生活を豊かにしていくための資質・能力が育成されることを示している。
なお,見方・考え方を生かしとは,生活科の学習過程において,児童自身が既に有している見方・考え方を発揮するということであり,また,その学習過程において,見方・考え方が確かになり,一層活用されることを示している。
他教科等と異なり「見方・考え方を働かせ」とせず「生かし」としているのは,幼児期における未分化な学習との接続という観点からである。
※ 平成29年6月小学校学習指導要領解説生活編における「身近な生活に関わる見方」である「身近な生活に関わる考え方は,自分の生活において思いや願いを実現していくという学習過程の中にある思考であり,自分自身や自分の生活について考えることやそのための方法である。」については,上記に変更された。
※ 【英訳(仮訳)】小学校学習指導要領では,「各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方(以下「見方・考え方」という。)」を「discipline-based epistemological approaches, hereinafter referred to as “Approaches”」と訳す。見方・考え方を“Approaches”で代表している。このことを考え合わせると見方・考え方の意味がより一層捉えやすくなる。すなわち,見方・考え方は,物事を認識するときの入り方,近づき方,せまり方と言い換えることができる。
引用:文部科学省「平成29年改訂小学校学習指導要領英訳版(仮訳)」[ONLINE]https://www.mext.go.jp/content/20200227-mxt_kyoiku02-100002604_1.pdf(cf:2020.05.26)
(3)資質・能力
自立し生活を豊かにしていくこと
① 自立への基礎
自立し生活を豊かにしていくことは,生活科における究極的な児童の姿である。
創設以来,生活科では
・ 学習上の自立,
・ 生活上の自立,
・ 精神的な自立
という三つの自立への基礎を養うことを目指してきた。
今回の改訂でも,この理念を受け継いでいる。
ここでいう自立しとは,
一人一人の児童が幼児期の教育で育まれたことを基礎にしながら,将来の自立に向けてその度合を高めていくこと
を指す。
② 三つの自立
学習上の自立とは,
自分にとって興味・関心があり,価値があると感じられる学習活動を自ら進んで行うことができるということであり,自分の思いや考えなどを適切な方法で表現できるということである。
生活上の自立とは,
生活上必要な習慣や技能を身に付けて,身近な人々,社会及び自然と適切に関わることができるようになり,自らよりよい生活を創り出していくことができるということである。
精神的な自立とは,
上述したような自立へと向かいながら,自分のよさや可能性に気付き,意欲や自信をもつことによって,現在及び将来における自分自身の在り方を求めていくことができるということである。
③ 生活を豊かにしていく
生活を豊かにしていくとは,
生活科の学びを実生活に生かし,よりよい生活を創造していくことである。
それは,実生活において,まだできないことやしたことがないことに自ら取り組み,自分でできることが増えたり活動の範囲が広がったりして自分自身が成長することでもある。
ここでいう豊かとは,
自分の成長とともに周囲との関わりやその多様性が増すことであり,一つ一つの関わりが深まっていくことである。
そして,自分自身や身近な人々,社会及び自然が一層大切な存在になって,日々の生活が楽しく充実したり,夢や希望が膨らんだりすることである。
このような児童の姿の実現に向けて,資質・能力を育成することを示している。
3 三つの柱
資質・能力の三つの柱としての目標の趣旨
(1)知識及び技能
⑴ 活動や体験の過程において,自分自身,身近な人々,社会及び自然の特徴やよさ,それらの関わり等に気付くとともに,生活上必要な習慣や技能を身に付けるようにする。
① 知識及び技能の基礎
教科目標の⑴は,育成を目指す資質・能力の柱のうち「知識及び技能の基礎」に関して示したものである。
生活科における「知識及び技能の基礎」としては,活動や体験の過程において,自分自身,身近な人々,社会及び自然やそれらの関わり等についての気付きが生まれることが考えられる。
生活科における気付きは,諸感覚を通して自覚された個別の事実であるとともに,それらが相互に関連付けられたり,既存の経験などと組み合わされたりして,各教科等の学習や実生活の中で生きて働くものとなることを目指している。
また,このような過程において,生活上必要な習慣や技能も活用されるものとして身に付けることを目指している。
② 知識の基礎
自分自身,身近な人々,社会及び自然の特徴やよさ,それらの関わり等に気付くとは,
具体的な活動や体験,伝え合いや振り返りの中で,
自分自身,身近な人々,社会及び自然がもっている固有な特徴や本質的な価値,それぞれの関係や関連に気付くことである。
ここでいう身近な人々とは,
家族や友達,近所の人,地域の人などであり日頃から顔を合わせるような人々である。また,遠く離れた場所に住んでいても心的に強くつながっているような人々である。
気付くとは,
児童一人一人に,自分自身,身近な人々,社会及び自然の特徴やよさ,それらの関わり等についての気付きが生まれるということである。
生活科でいう気付きとは,対象に対する一人一人の認識であり,児童の主体的な活動によって生まれるものである。
そこには知的な側面だけではなく,情意的な側面も含まれる。
自分が「あれっ」「どうして」「なるほど」などのように何らかの心の動きを伴って気付くものであり,一人一人に生まれた気付きは吟味されたり一般化されたりしていないものの,確かな認識へとつながるものとして重要な役割をもつ。
・ 無自覚だった気付きが自覚されたり,
・ 一人一人に生まれた個別の気付きが関連付けられたり,
・ 対象のみならず自分自身についての気付きが生まれたり
することを,気付きの質が高まったという。
気付きは確かな認識へとつながるものであり,知識及び技能の基礎として大切なものである。
生活科は,特に自分自身についての気付きを大切にしている。小学校低学年の児童における自分自身についての気付きとしては,次のようなことが重視される。
第1は,
集団生活になじみ,集団における自分の存在に気付くことである。
例えば,友達とものづくりをしたのがうまくいって「みんなでやったからできました。わたしもがんばりました。またやってみたいです」ということがある。
活動における自己関与意識や成功感,成就感などから,仲間意識や帰属意識が育ち,共によりよい生活ができるようになることである。また,集団の中の自分の存在に気付くだけでなく,友達の存在に気付くことも大切にする。
第2は,
自分のよさや得意としていること,また,興味・関心をもっていることなどに気付くことである。
例えば,生き物を育てることが得意で,それに興味・関心をもっていること,人や自然に優しくできることなどに気付くことである。
そこに個性の伸長・開花の兆しが現れる。また,自分のよさや得意としていることなどに気付くことは,同時に,友達のそれにも気付き,認め合い,そのよさを生かし合って共に生活や学習ができるようになることである。
第3は,
自分の心身の成長に気付くことである。
例えば,
・ 自分が大きくなったこと,
・ できるようになったことや役割が増えたこと,
・ 更に成長できることなど
に気付くことである。
そして,
こうした自分の成長の背後には,それを支えてくれた人々がいることが分かり,感謝の気持ちをもつようになること,また,これからの成長への願いをもって,意欲的に生活することができるようになることを大切にする。
生活科は,児童が身近な人々,社会及び自然と直接関わり合う中で,生活上必要な習慣や技能を身に付けることを目指している。
教科目標の⑴に「活動や体験の過程において……身に付けるようにする」とあるのは,児童が身近な人々,社会及び自然と直接関わり合う中にその機会があるため,それを捉えて指導するということである。
生活科においては,特定の習慣や技能を取り出して指導するのではなく,思いや願いを実現する過程において身に付けていくものである。
これによって,習慣や技能を実生活や実社会の中で生きて働くものとすることができる。
ここでの生活上必要な習慣
・ 健康や安全に関わること,
・ みんなで生活するためのきまりに関わること,
・ 言葉遣いや身体の振る舞いに関わること
などがある。
例えば,次のようなことが考えられる。
生活のリズムを整える
病気の予防に努める
安全への意識を高める
道具や用具の準備,片付け,整理整頓ができる
遊びのルールを守る
施設や公共の場所のルールやマナーを守る
時間を守る
適切な挨拶や言葉遣いができる
訪問や連絡,依頼の仕方を知る など
また,
生活上必要な技能には,
・ 手や体を使うこと,
・ 様々な道具を使うこと
などがある。
例えば,次のようなことが考えられる。
・ 必要な道具を使って遊んだり,物をつくったりする
・ 手や体,道具を使って掃除ができる
・ 動物や植物の世話ができる
・ 電話や手紙などを使って連絡する など
なお,習慣と技能とは切り離すことのできない関係にあることを考慮して,これらについては,取り扱う内容の中で,更に具体的に想定し,実践していくことが大切である。
このような習慣や技能が身に付いてくることが,児童が自立し生活を豊かにしていくことにつながる。
(2)思考力,判断力,表現力等
⑵ 身近な人々,社会及び自然を自分との関わりで捉え,自分自身や自分の生活について考え,表現することができるようにする。
① 思いや願いを実現する過程に,思考や判断,表現が存在
教科目標の⑵は,「思考力,判断力,表現力等の基礎」としての資質・能力に関して示したものである。
生活科では,思いや願いの実現に向けて,「何をするか」「どのようにするか」と考え,それを実際に行い,次の活動へと向かっていく。
その過程には,様々な思考や判断,表現が存在している。
思いや願いを実現する過程において,身近な人々,社会及び自然を自分との関わりで捉え,自分自身や自分の生活について考えたり表現したりすることができるようにすることを目指している。
② 自分との関わりで捉える
身近な人々,社会及び自然を自分との関わりで捉えるとは,
身近な人々,社会及び自然などの対象を,自分と切り離すのではなく,自分とどのような関係があるのかを意識しながら,対象のもつ特徴や価値を見いだすことである。
児童が具体的な活動や体験を通して対象と関わり,自分と対象との関わりを意識するようになることは,小学校低学年の児童の発達に適しており,将来につながる原体験となるものである。
③ 自分や生活を考え表現する
自分自身や自分の生活について考え,表現するとは,
身近な人々,社会及び自然を自分との関わりで捉えることによって,自分自身や自分の生活について考え,それを何らかの方法で表現することである。
表現する際には,児童は,相手意識や目的意識に基づいて表現内容や表現方法を考えることになる。
また,表現した結果から,考え直したり新たな思いや願いが生まれたりして,前の段階に戻ったり次の段階へ進んだりする。
④ 考える,表現する
このように生活科では,活動において,思考や表現などが一体的に行われたり繰り返されたりすることが大切である。
思いや願いの実現に向けて活動する中で,具体的に考えたり表現したりすることやそれを繰り返すことによって,自分自身や自分の生活について考え,表現することができるようになる。
ここでいう「考える」とは,
児童が自分自身や自分の生活について,
見付ける,比べる,たとえるなどの学習活動により,分析的に考えることである。
また,試す,見通す,工夫するなどの学習活動により,創造的に考えることである。
「表現する」とは,
気付いたことや考えたこと,楽しかったことなどについて,
言葉,絵,動作,劇化などの多様な方法によって,他者と伝え合ったり,振り返ったりすることである。
一人一人の気付きなどが表現されることによって確かになり,交流することで共有され,そのことをきっかけとして新たな気付きが生まれたり,様々な気付きが関連付けられたりする。
例えば,比べたり分類したりすることによって,ある気付きと別の気付きとの共通点や相違点,それぞれの関係や関連が確認されたときなどに,気付きの質が高まったということができる。
自分自身や自分の生活について考え,表現することにより,気付きの質が高まり,対象が意味付けられたり価値付けられたりするならば,身近な人々,社会及び自然は自分にとって一層大切な存在になってくる。このような「深い学び」の実現こそが求められるのである。
(3)学びに向かう力,人間性等
⑶ 身近な人々,社会及び自然に自ら働きかけ,意欲や自信をもって学んだり生活を豊かにしたりしようとする態度を養う。
教科目標の⑶は,「学びに向かう力,人間性等」としての資質・能力に関して示したものである。
生活科では,実生活や実社会との関わりを大切にしており,自立し生活を豊かにしていくことを重視している。
思いや願いの実現に向けて,身近な人々,社会及び自然に自ら働きかけ,意欲や自信をもって学んだり生活を豊かにしたりしようとすることを繰り返し,それが安定的に行われるような態度を養うことを目指している。
身近な人々,社会及び自然に自ら働きかけるとは,
児童が思いや願いに基づいて,身近な人々,社会及び自然に,自分から接近し何らかの行為を行うことである。
自分から働きかけることにより,そのときのドキドキした気持ちやワクワクした気持ち,満足感や達成感などのやり遂げたという気持ちを強く味わうことができる。
こうした自分自身の姿,変容や成長を捉え,自分自身についてのイメージを深めたり,自分のよさや可能性に気付いたりしていくことが大切である。
意欲や自信をもって学んだり生活を豊かにしたりしようとする態度を養うとは,
学校や家庭,地域において意欲や自信をもって学んだり生活を豊かにしたりすることが繰り返されることによって,それが安定的な態度として養われるようにすることである。
ここでいう意欲とは,
自らの思いや願いを明確にして,進んで学んだり生活を豊かにしたりしたいという気持ちである。
また自信とは,
思いや願いの実現に向けて,自分は学んだり生活を豊かにしたりしていくことができると信じることである。
生活科では,思いや願いを実現する過程において,自分自身の成長に気付くことや,活動の楽しさや満足感,成就感などの手応えを感じることが,一人一人の意欲や自信となっていく。
この意欲や自信が,自らの学びを次の活動やこれからの生活に生かしたり,新たなことに挑戦したりしようとする姿を生み出していくのである。
出典:文部科学省「小学校学習指導要領解説生活編 第2章 生活科の目標 第1節 教科目標」平成29年6月[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/05/1387017-6_2.pdf(参照2018/03/14)を加工して作成
平成29年7月版[ONLINE]http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2018/05/07/1387017_6_3.pdf(cf:2018-12-07) 確認