A4判紙とB4判紙から無理数√2,√3,√5,√6,√7,√8,√10を見つける
コピー用紙などのA判・B判規格紙から無理数を見つけるには,どのように操作してどこの長さを見るとよいのでしょう。
A判の短辺と長辺,B判の短辺と長辺の4つの長さの比は一定であり,無理数を含みます。
A判とB判紙の並べ方を工夫したり折ったりして,直角三角形の長さに着目し三平方の定理を基にして,\(\sqrt{n},n\in A=\{2,3,4,5,6,7,8,9,10\}\)を見出すことができます。







1 A判とB判の規格

(1)規格の原則

コピー用紙などA判とB判と呼ばれる紙のサイズには,決まりがあります。A判B判紙の2等分を繰り返しそれらが互いに相似となるように,紙のサイズが決まっています。
具体的には,A判,B判規格の紙は,どれも形が同じです。長方形の短辺と長辺の長さの比が \(1:\sqrt{2}\) の相似形です。
また,B判の面積はA判の面積の 1.5 倍です。A判についてはA0判の面積を \(1m^2\),B判についてはB0判の面積を \(1.5m^2\) とし,2等分と相似の原則に基づいて,各判各辺の長さを決めています。AシリーズBシリーズ2上記の詳しい内容は,別稿「A判・B判紙の長辺と短辺の比は 1:√2*1を参照ください。
なお,この「判」の呼称に関連して「シリーズ,列」という呼称がありますが,本稿では,便宜的にA4判,A判などと一律に「判」を使用することとします。

さて,本稿では,A判とB判の辺の比を基にして,A判とB判の紙を操作して,\(\sqrt{n},n\in A=\{2,3,4,5,6,7,8,9,10\}\)を見出していきます。

(2)A判とB判の辺の比

上記の原則に基づいて各判の辺の長さが決められています。
ここでは,同番号のA判とB判の辺の比で表すこととします。ただし,A判の短辺を 1 とします。
例えば,A4判の短辺を 1 とすると,B4判の長辺は\(\sqrt{3}\)となります。

A判B判辺の比

A4判の短辺を 1 とすると,同一番号のA判の短辺\(BC\)と長辺\(DC\),B判の短辺\(FG\)と長辺\(HG\)の比は,次のようになります。
\[BC:DC:FG:HG=1:\sqrt{2}:\sqrt{\dfrac{3}{2}}:\sqrt{3}\tag{1}\]
(1)の詳細については,別稿「A判とB判の図形としての無理数の関係」で説明しています。また,実際に紙を折って確かめる方法も解説しています。

2 無理数を作る

(1)\(\sqrt{5},\sqrt{6}\)を作る

\(\sqrt{2},\sqrt{3}\) は既に分かっています。A判の対角線が \(\sqrt{3}\) であることは,三平方の定理より証明できます。(※証明は別稿「A判とB判の図形としての無理数の関係」)
また,\(\sqrt{4}\) は,\(\sqrt{4}=2\) で無理数ではありません。
まず,\(\sqrt{5},\sqrt{6}\) から,見つけることを始めましょう。
なお,A判とB判は,図形として長方形であることを前提として以下の話を進めます。

下左図はA判を横向き,B判を縦向きにして,頂点B(頂点F)を揃えて重ねています。
このとき,\(BC=\sqrt{2},EF=\sqrt{3}\) 及び三平方の定理より \(EC=\sqrt{5}\) となります。
$$\begin{equation}\begin{split}BC^2+EB^2&=EC^2\\\sqrt{2}^2+\sqrt{3}^2&=EC^2\\EC^2&=5\\EC&=\sqrt{5}\end{split}\end{equation}$$
無理数の作り方1
上右図は,B判二枚を頂点C(頂点G)を揃えて,図のように重ねています。
このとき,\(BC=HC=\sqrt{3}\) 及び三平方の定理より \(BH=\sqrt{6}\) となります。
$$\begin{equation}\begin{split}BC^2+HC^2&=BH^2\\\sqrt{3}^2+\sqrt{3}^2&=BH^2\\BH^2&=6\\BH&=\sqrt{6}\end{split}\end{equation}$$

(2)\(\sqrt{7}\)を作る

A判を二枚,B判を二枚用意します。隣接する判の一つ大きい紙を一枚ずつ用意してもよいです。
例えば,A4判とB4判をそれぞれ二枚ずつ計四枚を用意するのであれば,A3判とB3判をそれぞれ一枚ずつ計二枚を用意しても作ることができます。
A3判とB3判の場合では,それぞれ半分におって折り目をつけます。
ルート7の作り方上図では,A判二枚とB判二枚を長辺を合わせて,頂点Aに揃えて重ねています。
このとき,\(BC=CD=1,BG=\sqrt{3}\) 及び三平方の定理より \(GD=\sqrt{7}\) となります。
$$\begin{equation}\begin{split}BD^2+BG^2&=GD^2\\2^2+\sqrt{3}^2&=GD^2\\GD^2&=7\\GD&=\sqrt{7}\end{split}\end{equation}$$

(3)\(\sqrt{8}\)を作る

A判を四枚用意します。隣接する判の一つ大きい紙を二枚用意してもよいです。
例えば,A4判四枚であれば,それにかえてA3判二枚を用意してもよいです。
ルート8の作り方上図は,A判を二枚ずつ縦向きと横向きにして,頂点Dに揃えて重ねています。
このとき,\(BD=KD=2\) 及び三平方の定理より \(KB=\sqrt{8}\) となります。
$$\begin{equation}\begin{split}BD^2+KD^2&=BK^2\\2^2+2^2&=BK^2\\BK^2&=8\\BK&=\sqrt{8}(=2\sqrt{2})\end{split}\end{equation}$$

3 \(\sqrt{n}\)を見出す

(1)A判三枚で見つかる無理数\(\sqrt{n}\)の長さ

三枚のA判を使って図のように配置すると,\(\sqrt{2},\sqrt{3},\sqrt{4},\sqrt{5},\sqrt{6},\sqrt{7},\sqrt{8},\sqrt{9},\sqrt{10}\)を作ることができます。
無理数を作る2-7上図では,A判二枚の長辺DCを重ねて,三枚目A判IEGHは,頂点Eを一致させ,A判DCEFの長辺FEにA判IEGHの対角線HEを重ねるようにします。
また,A判DCEFの辺CEを頂点Eを中心として,辺CEと辺FEが重なるように折り返します。点Cと重なった辺FE上の点を点Kとします。同様に点Eを折り返した点を点Jとします。
このとき,四角形JCEKは一辺が 1 の正方形です。
無理数を作る8-10上図では,A判二枚の短辺DCを重ねています。三枚目のA判GHEIの頂点Eを揃え,辺IEをA判DCEFの辺FEに,辺HEをA判DCEFの辺CEに重ねて配置します。

(2)\(\sqrt{n},n\in A=\{2,3,4,5,6,7,8,9,10\}\)

① \(\sqrt{2}\)
下図は,A判一枚の長方形です。
長方形の短辺の長さ 1 を辺AB及びDC上に移しています。
\(BF\)は,一辺を 1 とする正方形の対角線の長さです。ルート2$$\begin{equation}\begin{split}BC^2+CF^2&=BF^2\\1^2+1^2&=BF^2\\BF^2&=2\\BF&=\sqrt{2}\end{split}\end{equation}$$
② \(\sqrt{3}\)
下図は,A判一枚の紙の長方形です。
\(BD\)は,A判の対角線の長さです。
また,\(\sqrt{3}\)は,B判の長辺の長さでもあります。ルート3$$\begin{equation}\begin{split}BC^2+CD^2&=BD^2\\1^2+\sqrt{2}^2&=BD^2\\BD^2&=3\\BD&=\sqrt{3}\end{split}\end{equation}$$
③ \(\sqrt{4}\)
下図では,A判二枚を使っています。
A判ABCD,A判BEFCの長辺BCを重ねています。
A判ECFGは,A判ABCDの頂点Cと頂点を一致させ,A判ABCDの長辺CDにA判ECFGの対角線CGを重ねています。
\(BG\)は,A判の短辺と対角線を利用した長さです。
ルート4$$\begin{equation}\begin{split}BC^2+CG^2&=BG^2\\1^2+\sqrt{3}^2&=BG^2\\BG^2&=4\\BG&=\sqrt{4}=2\end{split}\end{equation}$$
④ \(\sqrt{5}\)
下図は,A判二枚の長方形の長辺DCを重ねて並べています。
□JCEKは,一辺の長さが 1 の正方形です。
短辺二つ分と正方形の辺(短辺一つ分)を利用しています。
ルート5$$\begin{equation}\begin{split}BE^2+EK^2&=BK^2\\2^2+1^2&=BK^2\\BK^2&=5\\BK&=\sqrt{5}\end{split}\end{equation}$$
⑤ \(\sqrt{6}\)
下図は,A判二枚の長方形です。
それぞれの長辺DCを重ねて並べています。A判の一つ大きいサイズの紙一枚と同様です。
例えば,A4判二枚であれば,A3判一枚と同様です。
短辺二つ分と長辺の長さを利用しています。
ルート6$$\begin{equation}\begin{split}BE^2+EF^2&=BF^2\\2^2+\sqrt{2}^2&=BF^2\\BF^2&=6\\BF&=\sqrt{6}\end{split}\end{equation}$$
⑥ \(\sqrt{7}\)
下図では,A判三枚を使っています。
A判二枚の長辺DCを重ねて並べています。三枚目A判GEHIは,頂点Eを一致させ,A判DCEFの長辺FEにA判GEHIの対角線EIを重ねています。
短辺二つ分と対角線の長さを利用しています。
ルート7
$$\begin{equation}\begin{split}BE^2+EI^2&=BI^2\\2^2+\sqrt{3}^2&=BI^2\\BI^2&=7\\BI&=\sqrt{7}\end{split}\end{equation}$$
⑦ \(\sqrt{8}\)
下図では,A判二枚を短辺DCを揃えて並べています。
\(BE\) は,長辺二つ分の長さです。
ルート8
$$\begin{equation}\begin{split}BE&=BC+CE\\&=\sqrt{2}\times 2\\&=2\sqrt{2}\\&=\sqrt{8}\end{split}\end{equation}$$
⑧ \(\sqrt{9}\)
下図では,A判二枚を短辺DCを揃えて並べています。
短辺と長辺の二つ分を利用しています。
ルート9
$$\begin{equation}\begin{split}BE^2+EF^2&=BF^2\\\sqrt{8}^2+1^2&=BF^2\\BF^2&=9\\BF&=\sqrt{9}=3\end{split}\end{equation}$$
⑨ \(\sqrt{10}\)
下図では,A判二枚の短辺DCを重ねています。
三枚目のA判GHEIの頂点EをA判DCEFの頂点Eと揃え,辺HEをA判DCEFの辺CEに,辺IEをA判DCEFの辺FEに重ねて配置します。
長辺二つ分と長辺一つ分の長さの組を利用しています。
ルート10
$$\begin{equation}\begin{split}BE^2+EI^2&=BI^2\\\sqrt{8}^2+\sqrt{2}^2&=BI^2\\BI^2&=10\\BI&=\sqrt{10}\end{split}\end{equation}$$
下図の場合でも\(\sqrt{10}\) ができます。
A判三枚を長辺を揃えて並べた場合です。
A判EFGHでは,\(FG=JG=FI=1\) となるよう頂点I,頂点Jをとります。
そのとき\(BJ\)が\(\sqrt{10}\) になります。短辺の三つ分と短辺一つ分(短辺を移した正方形の一辺)を利用しています。
加えて,\(BH\)は\(\sqrt{11}\)になります。
ルート10-11

4 まとめ

A判の短辺を 1 とすると,同一番号のA判の短辺と長辺,B判の短辺と長辺の比は,次のようです。
\[1:\sqrt{2}:\sqrt{\dfrac{3}{2}}:\sqrt{3}\]
これを基にして,A判とB判の紙を工夫して並べたり折ったりすると,\(\sqrt{x},x\in X=\{2,3,4,5,6,7,8,9,10\}\)を作ることができます。
特に,A判三枚を「3 \(\sqrt{n}\)を見出す(1)A判三枚で見つかる無理数\(\sqrt{n}\)の長さ」のように配置すると,\(\sqrt{2},\sqrt{3},\sqrt{4},\sqrt{5},\sqrt{6},\sqrt{7},\sqrt{8},\sqrt{9},\sqrt{10}\)を見出すことができます。
変わった形として次のような並べ方ができます。ルート2-12